


プロジェクトマネジメントで世界を変える──進化し続ける女性リーダー
小川原陽子さん
日本IBM株式会社 アソシエイトパートナー
PMI日本支部 理事/女性コミュニティ代表
生命理学を研究していた学生時代から一転、外資系IT業界へ。担当領域はヘルスケア一筋で、プロジェクトマネージャーとし ても躍進。PMI日本支部の理事および女性コミュニティの代表も務めています。趣味は大人になって再開したピアノで、ショパンやベートーヴェンといったクラシック曲に挑戦するのがライフワーク。息子のことが大好きです。
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IT知識ゼロから始まったキャリア──平等な働き方を求めて

新卒で入社した日本IBMでキャリアを重ねる小川原さん。現在はコンサルティング事業部アソシエイトパートナーとして複数の病院を担当しながら、PMI日本支部の理事や女性コミュニティ代表を務めています。そんな彼女のキャリアの始まりは、意外なものでした。
大学院では生命理学を専攻し、タンパク質や遺伝子の研究に明け暮れる日々。研究者を目指していた修士1年の3月、内定のないまま就職活動はすべて終わってしまいました。
「就職氷河期の真っ只中で、女性だからという理由で待遇が違ったり、採用枠が限られていたり。そんな経験から、『女性でも平等に働ける会社を選ぼう』と思いました。それなら外資系企業だ、と。中でもITは知識ゼロだからこそ面白そうだと思ったんです」。面接では「ITの勉強はこれから頑張ります」と、実直な意気込みを伝えたといいます。
入社後は半年間の研修で基礎を固め、配属されたのはヘルスケア事業部。生命理学を研究してきたとはいえ、人を相手にする医療現場はまったくの別世界でした。病院の専門用語も業務もわからない中、とにかく体当たりで吸収。そんな真摯な姿勢が、顧客との信頼関係を築いていきました。

失敗から学んだPMの本質──業界を超えて活きるメソドロジー

プロジェクトマネージャー(PM)への道は、偶然から始まりました。入社数年後、既存PMのピンチヒッターとして急遽PM業務を担当することに。戸惑いつつもやってみると、「関係者を巻き込んでゴールを目指す仕事は自分に向いているかも」と感じたそうです。
しかし業務にも少しずつ慣れてきた頃、大きな壁にぶつかります。大規模カスタムプロジェクトで、要件定義が終わらないループに陥ってしまったのです。そこに現れたのが、他業界からの「助っ人PM」でした。
「その人のおかげで、業界に関わらずプロジェクトマネジメントのメソドロジーが適用できるんだと気づいて。慣れや経験則で実践するのではなく、勉強して知識を修得した上で実践することが必要だと思ったんです」。この転機を経て、社内のPM認定制度に挑戦し、最上位レベルまで取得しました。
そして最も印象深いのが、他業界のトラブルプロジェクトへの参画でした。お客様との信頼関係が揺らぎ、チームは疲弊している状況で、PMとしての力を駆使し、冷静にプロジェクトを分析しながら課題を一つひとつ解決していきました。数か月後、プロジェクトの状況は可視化され、お客様との関係性は改善し、最終的には成功裏にシステム稼働を達成しました。
「優れたPMは、業界がどこであろうとマネジメントができる。それを実感した経験でした」。

今後の目標──医療DX推進とPM育成

一見すると順調に見えるキャリアですが、小川原さんは「全然すんなりじゃなかったですよ」と笑います。トラブルプロジェクトを何度も経験し、その都度自身の弱点を洗い出し、必要な力を身につけてきました。
今後の目標は二つ。ひとつは、ヘルスケア業界における医療DXの推進です。「少子高齢化、医師・看護師不足に直面する日本において医療DXを推進するために、プロジェクトマネジメントの力は有効です。それによって人々が安心して健康で暮らせる世の中になると信じています」。
もうひとつは、PM育成活動の継続です。PMプロフェッショナルリーダーとして社内のPM育成に注力し、「育成することで、働いている皆さんも生き生きと輝ける」ことを実感してきました。PMI日本支部の理事、女性コミュニティの代表としても活動をもっと拡大したいと語ってくれました。
AIがプロジェクトマネジメントのあり方を変えつつある今、PMの役割は管理業務から戦略的リーダーシップへと進化しています。「PMにとっては今こそスキルを磨き、組織や業界を変革する価値提供者へと進化するチャンスです」と語る小川原さん。IT知識ゼロで飛び込んだ業界で、プロジェクトマネジメントの力を武器に進化し続ける姿は、PMを目指す多くの人々にとって、心強い道標となるでしょう。
ライター:安藤未来 グラフィックレコーディング:岸智子 インタビュアー:浦田有佳里、石鍋和佳子
