「プロジェクトマネジメントに出会えて良かった」。キャリアステップの中で見つけたPMの仕事と、価値創出の喜び
坂本芳湖さん
コンサルティング会社アカデミー部門所属
これまでのキャリアやプロジェクトマネージャーの経験から、プロジェクトマネジメントの可能性や知見を伝え教えるコンサルタント会社に従事。
読書や人間観察のほか、最近では栗山前WBC監督や、オリックス・中嶋監督を推す「推し活」が趣味。
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環境のせいにして流されていた自分。思い切ったアクションで、外資系企業に転職
複数回の転職を通じてステップアップしてきた坂本さん。現在はコンサルティング会社のアカデミー部門に所属し、プロジェクトマネジメントの手法を広く伝える仕事に従事しています。
そんな坂本さんがプロジェクトマネージャーの仕事に出会うまでには、転換点となるような転職が過去にいくつかありました。
「子どもが小さかった頃、子育てと両立するために仕事をセーブしていました。でも、楽しみも辛さも何もない、プロジェクトの深淵に関わることのできない仕事はつまらなくて」。そんな想いをくすぶらせていた坂本さんは、能力を活かして自分らしく働ける外資系企業に興味を持ちます。
「当時勤めていた会社と同じ敷地に、外資系企業が入っていたんです。それで、そのオフィスから出てきたドイツ人の女性に『ちょっとちょっと』と声を掛けました。『人員は足りている?私働けるけど、どう?』って」
そんな豪快なコミュニケーションに驚きですが、その邂逅が外資系企業社長の耳にまで届いたというからまた驚きです。しかし採用に向けての話が進んでいたところで、東日本大震災が発生。未曾有の事態に、採用活動そのものがストップしてしまいました。
「そこで、ふと気付いたんです。“子どもが小さいから”とか、環境のせいにしていては駄目なんだって。自分の人生を輝かせるためには、自分がやりたいことをきちんと自覚しないといけない。そう思って会社を辞めたところ、結局エージェントから電話があり、例の外資系企業に転職できることになりました!」
「プロジェクトマネジメント」に出会い、PMBOK®(第7版)に感動
そうして始まった仕事を通じて、「自分の足で歩んでいる」と実感できた坂本さん。仕事への充足感を得ると同時に、プロジェクトマネジメントの領域に興味を持ち始めました。
次に坂本さんが選んだのは自動車業界でした。新技術やトピックスの枚挙に暇がない大きな産業の中で、システム開発に携わることに。ここでは会社の再編成など稀有な出来事も経験しました。
「そんな大きなムーブメントの中で、メンバーのモチベーションがどのように動いていくのかを間近で見つめることができました。この経験はPMとしての素地になりましたね」
もっとPMを極めたいという想いから「私にPMBOK®を取得させれば絶対にいいことがあるから勉強させてほしい」と上司に掛け合った坂本さん。1か月の猛勉強の末、上司との約束通り一発合格を果たします。
第6版での合格でしたが、特に価値創出に重きを置く第7版(PMBOK®7)の内容がお気に入りなのだそう。
たとえば自動車産業において、システムが原因の事故などはあってはならず、安全性の担保は当然のこと。実は本当に大切なのはその先で、目指すべくは“その車でお出かけして楽しい思い出が作れるという価値”なんだと、PMBOK®7によって気付かされたと坂本さんは話します。
PMとして幸せな瞬間があったからこそ、ほかの人にも楽しく仕事をする術を伝えていきたい
プロジェクトマネージャー時代は、辛かったことも楽しかったこともたくさん経験してきました。特に品質トラブルという大ピンチに見舞われたときのことを、坂本さんは振り返ります。
「自分で全部を引き受けなくてはいけないと思って、肩肘を張りすぎていたんです。でもそれでは何も解決しなくて。深呼吸して、『私が全責任を持ちます』とメンバーに伝えました。だからやるべきことを安心して提案してください、と」
すると、明らかに場の空気が一変しました。坂本さんの覚悟が伝播したのです。メンバーそれぞれができることに取り掛かり始め、坂本さんがそれを繋ぐ。そうすることで結果、トラブルは事なきを得ることができました。この出来事は、坂本さんのPM人生にとって幸せな瞬間として胸に刻まれています。
プロジェクトマネジメントとは、 “何のための仕事なのか”を見据え、チームで価値をつくりだしていくこと――。
PMの伝道師として、坂本さんはこれからも価値創出の大切さ、そして面白さを伝えていきます。
ライター:安藤未来 グラフィックレコーディング:岸智子
インタビュアー:中村ますみ、山本富志江、永合由美子