やりたい職種にチャレンジしながら、新卒で入った会社でプロジェクトマネージャーに
ヨーロッパに本社を置く化学品メーカーで、プロジェクトマネージャーを務めている鈴木さん。会社は、複数の国で事業を行うマルチナショナルカンパニーです。
新卒で入社した鈴木さんは、開発された化学品を法令に基づいて登録申請する部署に配属され、キャリアを重ねました。
しかし次第に「一度コマーシャル業務を経験しておきたい」という想いを抱きはじめ、セールスへ異動。社用車でお客様のもとクライアントをまわる日々を過ごしながら、第一子出産のため産休・育休へ入ることになりました。
鈴木さんの想定では、育休が明けたらセールスに戻る予定だったそうです。しかし会社からプロジェクトマネージャーのポジションへの打診があり、PMとして復職することに。2017年のことです。
自社の中にプロジェクトマネージャーという職種があること自体、知らなかったという鈴木さん。
「もしかしたら、リスク察知能力を買われたのかもしれません。また、子育てしながら働くことを考えたときに、自分がオーナーシップを持てる仕事に惹かれました」と話します。
さらに2020年には第二子を妊娠、育休へ。コロナ禍で時間ができたことも手伝ってPMP ®の試験勉強をスタートさせ、無事合格を果たしました。
100もの長期プロジェクトを管理できる、リスク察知能力
会社規模は全世界で30,000人、日本支部で300人ほど。全世界を4〜5のリージョンに分類し、全体でプロジェクトマネージャーが約50人アサインされています。鈴木さんはアジア・太平洋地域のPMとして日本と台湾を担当。海外案件のコミュニケーションは英語で、語学は入社後のOJTで修得したのだとか。
化学品開発業界においては、短いもので数年、長いもので7〜8年と、基本的に長期スパンの時間軸で案件が進んでいきます。その長期プロジェクトを、鈴木さん1人で100以上担当しているというから、その案件数に驚いてしまいます。
「100あるプロジェクトには、難易度別に濃淡があります。業界の特性上、1サイクルは1年単位。その長いサイクルの間、リスクの芽を注視しておくことが大切です」
プロジェクトマネージャーとして、社内のさまざまな部署のメンバーと密にコミュニケーションを取りながら、日々プロジェクトを進めている鈴木さん。以前は社内での気軽な立ち話の場で情報収集を行い、“リスクのシグナル”を察知していました。コロナ禍を経て在宅勤務が増えてからは、電話会議やテキストコミュニケーションの機会を意識して連携を図っています。
「PMはかけがえのない経験ができるポジション!」若い世代へのバトンパスも視野に
レギュラトリーアフェアーズ(規制関連業務)、セールス、プロジェクトマネージャーと、同企業内でさまざまな職種を経験してきた鈴木さんは、プロジェクトマネージャーの肩書を得たことで、さまざまな国のメンバーと接点を持ちました。国によって異なる予算規模、他国から日本がどう見えているのかという感覚など、普通に生活していたら知り得ない考え方に出会えたと、鈴木さんは振り返ります。
社内の異動サイクルはそれぞれですが、鈴木さんは、徐々に次世代へのバトンパスを考えているようです。20〜30代という若いメンバーに、ぜひプロジェクトマネージャーのポジションを経験してもらいたいと微笑みます。
鈴木さんに、今後の目標について聞いてみました。
「PMにアサインされてから6年、歳も四十路というタイミングなので、そろそろ新しいことに挑戦したいと思っています。実は、入社当初からマーケティングに憧れていたんです」
さまざまな職種で会社を支えてきた鈴木さんだからこそ、多様で幅広い視点を持ったマーケターになれそうです。プロジェクトマネージャーという未知のポジションにも、しなやかに対応してきた鈴木さん。それらの経験を糧に、彼女の挑戦は続いていきます。
ライター:安藤未来 グラフィックレコーディング:岸智子
インタビュアー:(メイン)小川原陽子、(サブ)中村ますみ、山本富志江、永合由美子